2017年07月17日

点数化してみる

 先日の、解決志向アプローチ入門講座でのことを、またすこし報告します。カウンセリングのやりとりのデモンストレーションを行いました。時間は、約15分という短い時間でした。実はその短い時間の中で、少しだけ良い変化が生じてきたのですが、それは、クライエント(相談者)役をやって下さった方も感じたようですし、見ていた参加者の皆さんも感じ取って下さったようです。
 デモンストレーションでは、クライエント役の方は、自分自身が実際に悩んでいることを話してくださいました。デモンストレーションでは、なりたい自分を聞くことに、前半の半分ぐらいの時間を使いました。実は、ただ単に、「なりたい自分はどんな自分ですか?」と聞いただけでは、なかなか具体的にはなりません。解決志向アプローチ独特の質問技法を活用して聞いていきました。10分弱で、ある程度なりたい自分が明確になった段階で、スケーリングクエスチョンを行ってみました。スケーリングクエスチョンは、小さな差位に目を向け、小さな変化が生じることを促すために使われます。また、変化については、クライエントが「ちょっと良くなった」などと曖昧に表現しがちなのですが、それを具体的にするという意味もあります。

 典型的な質問の言い方は、「最高に良い時を10点として、最悪を1点としたら、今は、何点ぐらいですか?」と投げかけます。ほとんどの場合クライエントは、あまり戸惑ったりせずに「大体、4点ぐらいだと思います」などと答えてくれます。そこで、さらに「それでは、その4点という点数ですが、4点の理由について教えて下さい。」などと、今できていることを具体的に聞いていきます。そして、「もし、今よりも、1点だけ上がったとしたら、どんなふうに良いことが起きそう?」などと、小さな変化に目を向ける質問をします。
 デモンストレーションでは、こんなふうにクライエント(相談者)役をやってくれた方に、数値で表してもらっていました。それだけの働きかけなのですが、自分自身の良い方向性が見えてきて、表情まで明るくなってきたのです。本人も観察していた人達もそれに気づいてくれて、デモンストレーションとしては、成功でした。

このスケーリングクエスチョンは日常生活の中で、自分ひとりだけでも使える方法だと思います。自分自身のなりたい自分をしっかりイメージした後に、「最高に良い時を10点として、最悪を1点としたら、今は、何点ぐらいですか?」と自分自身に聞いてみます。そして、自分で付けた点数について、その点数分のできていることを具体的に書き出してみます。いくつでもOKです。そして、今よりも1点だけあがった時を少し想像してみて下さい。今よりも、1点だけあがった状態の自分は、今と違って何ができているでしょうか? それも想像してみて、具体的に書き出してみます。なお、念のためですが、「今より1点だけあがるためには、何をしなくてはならないか?」とは考えないで下さい。

「今よりも、1点だけあがったときの自分は、今よりも何ができているか?」とその時の自分を想像してみて、その想像の中でできていることを具体的に書き出してみて下さい。

スケーリングクエスチョンなどの解決志向アプローチの技法については、心理教育支援室リソースポートの解決志向アプローチの技法のページをご参照ください。  

Posted by リソースポート at 19:23Comments(0)解決志向アプローチ
もうすぐ夏休みですが、夏休みの期間中、学校の先生方はたくさんの研修に追われます。私も、いくつかの研修会に呼んでいただき、講師を担当することになっています。今年は、発達障害の子どもたちをどう理解してどう支援していくのかという内容での研修をいくつか頼まれています。私なりに、今まで学んできたことや自分の実践の中で工夫してきて手応えを感じていることをお伝えしようと思っています。



 そういった研修会の中でお話ししようと思っていることの一つに、「ごめんなさいが言えない」という問題への支援方法があります。学校現場では、発達障害の子どもたちが、友達とトラブルになってしまったときになかなか謝罪できず、先生方 が対応に苦慮しているという現状があります。相手の子に謝るように繰り返し指導しているけれども、自分勝手な理屈を主張して謝らないというような事例もあるようです。先生方も発達障害の子どもを責めたいわけではなく、その子が相手の子どもから否定的に思われることを避けるため、社会へ出たときに人と上手くやっていく力を育てるため、などと子どものためを思って一生懸命指導されているようです。しかし、繰り返し指導してもなかなか謝れるようにならないケースがあります。

 その一つに、「悪いことをした人は謝らないといけない」という指導方法がかえって逆効果になっている場合があります。発達障害の子どもの中には、自分自身が感じて いることが世界の全てであって、他人が自分とは違うふうに感じているということがピントこない子どももいます。そうすると、その子どもにとっては、自分自身は「悪いこと」はしていないという感覚なのです。
 例えば、小学校2年生の授業中の活動で話し合い活動をしていたとします。A君は、後ろを向いて後ろの座席の子ども(B君)と話していました。時間が来て、先生が話し合い終了の指示を出して、A君は前を向きました。そのときに、机の端においてあったB君の筆箱にA君の手が当たってしまって、B君の筆箱が机から落ちてしまいました。そしてB君の筆箱は割れてしまい、B君は泣きはじめてしまいました。それを見た担任の先生は、何が起 きたのかを本人や周囲の子どもたちから聞いて、状況を理解しました。そして、A君に対してB君に謝るように言いました。しかし、A君は「僕は悪くない」と言い張って、全く謝りません。さらに先生が指導すると、「B君が机の端に筆箱を置いていたのが悪い」「先生が急に前を向くように言ったのが悪い」と言ってきます。そこで、先生は「筆箱を落としたのはA君なんだから、悪いのはA君でしょう。悪いことをした人は謝らないといけないよ」と指導しますが、A君は「自分は悪くない」「B君と先生が悪い」と先ほどと同じ事を言ってきて指導を全く受け入れられない状況です。

 発達障害を持つ子どもの中には、こんなふうに友達とトラブルになって しまったときに謝れないということが生じがちです。こんな場合にお勧めできない指導方法は、「悪いことをした子は謝らないといけないよ」という言葉に表れてきている、「誰が悪いかを決め」「悪いことをした人が謝罪する」という指導です。発達障害の子どもたちは、他者の立場に立って、他者の見方で自分自身を理解することが苦手です。つまり、自分自身の立場にたって、自分自身の見方で理解した世界が世界の全てなのです。上述の例では、A君は筆箱を落としてやろうとか、B君を困らせてやろうなどとは全く考えていなかったでしょう。自分自身には悪意はないのです。だから「誰が悪いか?」とA君を追求していけば、A君は「筆箱を机の端に置い たB君が悪い」とか、「急に呼びかけてあわてさせた先生が悪い」と考えを進めていくしかありません。こういった状況で無理に「ごめんなさい」と言わせても、形だけの謝罪になってしまいがちです。A君にとっても、理解できない不快な体験として記憶される可能性が高いですし、B君にとっても納得のいかない結末となってしまうでしょう。

 では、どんなふうに指導していけば、トラブルが生じたときに謝らせることができるのでしょうか? まず、必要なことは、共感的にかかわることです。A君にもB君にも共感的にかかわる必要があります。B君が泣いているわけですから、まずB君に「筆箱が壊れてしまって、ショックだね。悲しい気持ちになる ね。」などと感情を言語化しつつ、気持ちを受け止めていくことが大切でしょう。そして、A君に対して「筆箱が落ちちゃって壊れちゃって、A君もびっくりしたかな? ショックだよね。」などと同様に声をかけてあげたいところです。さらに「B君が、どんな気持になっているか、A君は分かるかな?」、あるいは、「あなた(A君)も、ビックリしたりショックだったり、いやな気持ちになっちゃったんだけど、B君も、すごくいやな気持ちになったんだよね。」などとB君の気持ちに目を向けさせます。もしA君が「(B君は)すごく悲しいんだって」などと、B君の気持ちを受け止める発言が出てきたら、すごくほめてあげたいと思います。ここで、こちら から「相手の気持ちを大切にする言葉を前に勉強したでしょう。覚えてるかな?」とA君に投げかけます。(事前の学習を思い出させます。)そして、A君にどう言えばいいかを考えさせて、答えられたら、それを言うように促します。答えられなかったら、「この場合はB君に「すみませんでした」って言おうね」などと促して、できる限り言わせるように指導します。言えない場合には、「A君は本当は「すみませんでした」って言いたいけど恥ずかしくって言えないから先生がA君の代わりにB君に言っておいてもいいかな?」とA君に確認した上で、A君のいる場面で、A君に聞こえるように、B君に「すみませんでした」と謝ります。謝って終わりではなく て、「これからはどうしたらいいと思う?」などとA君(B君にも)投げかけます。自分の行動を振り返ることも大切なことだと思われます。

 途中で書いたように、この指導が成立するためには、事前の指導が必要です。「ありがとう」「ごめんなさい」「すみません」という言葉は相手の気持ちを大切にする言葉だと授業などで学ばせておきます。大人が電車で席を譲ってもらった時にどう言うかを例にあげて学習します。席を譲ってもらった人が、譲ってくれた人に「ありがとう」と言う場合もありますが、「ごめんなさい」とか「すみません」と言う場合もあります。自分が悪いことをしたから「ごめんなさい」とか「すみません」と謝っているのではな く、相手の気持ち(善意)に対して配慮するための言葉だと学ばせます。悪いことをした人が使うわけではないということがポイントです。誰も悪くない時に、相手の気持ちを大切に思って、「ありがとう」「すみません」「ごめんなさい」などと言うわけです。上の例で「すみませんでした」と言うように促すことは、2つの理由があります。1つは、「ごめんなさい」というのは、悪いことをしたときに謝る言葉だと、色々な場面で教え込まれてしまっている可能性があるからです。A君が「自分は悪くないからごめんなさいは言わない」と拒否するかもしれません。もう1つの理由は語原からです。「すみません」は「済みません」とも「澄みません」とも漢字 で書きます。「気持ちが済まない」つまり、気持ちの整理がつかないというニュアンスが含まれています。「気持ちが澄まない」も同様で、気持ちの中にモヤモヤが残ってしまうというニュアンスが含まれています。相手の気持ちも自分の気持ちも、整理がつかなかったり、モヤモヤするということを、口に出して表現して、気持ちを大切にする言葉が「すみません」という言葉なのです。こういった理由から、「すみませんでした」と謝意を表すことを促すのがよいと思われます。  

Posted by リソースポート at 17:01Comments(0)子育て発達障害
 つくば市の研究学園駅から徒歩10分程度の所にある、Atelier como というレンタルスペースをお借りして、「解決志向アプローチ入門講座」
を行いました。参加者は、9名でした。また、今回の講座は学校心理士資格の資格更新ポイントB1(1ポイント)として認められました。

 解決志向アプローチというのは、カウンセリングの理論の一つで、短期的に効果的に良い変化を促していく方法です。カウンセリングだけではなく、コーチングなどの人材育成にも活用されています。今回の講座では、講義を聞いてもらうだけではなく、面接のデモンストレーションや演習、実習(ロールプレイ)など、体験しながら学ぶことを大切に行いました。面接のデモンストレーションは、解決志向アプローチを使った対話の例をまずは見てもらうということで、私がカウンセラー役となり、参加者からお一人募ってクライエント役をやっていただきました。解決像を(概ね)構築して、スケーリングクエスチョンを使ってみたところで、15分程度の時間が経過して、デモンストレーションを終えました。解決像について一緒に考えるプロセスや、スケーリングをするするプロセスで、クライエント役の人が前向きになったり、解決が近づいてきていることを観察していた参加者の皆さんが気づいてくれたようです。

 その後の演習、実習では「解決像を構築する」「スケーリングクエスチョン」の2つの内容を中心として進めました。「解決像」は解決志向アプローチの最も大切なところだと思いますが、一番、分かりにくいところでもあると思います。今までに習慣化している「問題」や「悩み」、それらの「原因」に目を向けるという思考プロセスが邪魔をしてしまうからだと思います。そこで、今回は「解決像」について一通り開設した後に、簡単な事例をもとにして解決像を構築していく演習を小グループで行いました。「問題」や「原因」ではなく、しかも「解決策」でもなく、「解決像」を一緒に構築していくということを体感していていただけたように思います。

「スケーリングクエスチョン」については、質問の仕方や言い回しなどについて説明した後に、ロールプレイの実習を行いました。3人一組で聴き手、話し手、観察者の役割をとってもらい、聴き手には、少々強引でもスケーリングクエスチョンを使ってみることをロールプレイを行いました。苦労した聴き手の方もいらっしゃったようですが、その後の振り返りやディスカッションでは有意義な話し合いができました。

 新幹線を使って愛知から来て下さった方、高速道路を使って福島から来て下さった方、茨城県内からも1時間以上かけて来て下さった方など、わざわざ遠くから来て下さった方が多く、驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。また、10月29日(日)には同じ会場をお借りして、「解決志向アプローチ入門講座 その2」を行う計画です。内容は、「関係のアセスメント」、「リソース」、「コンプリメント」を考えています。「リソース」は解決志向アプローチのなかでは、「解決像」に次いで重要な概念だと(私は)思っております。また、実習や演習をおこなって、実りのある講座を行おうと思います。


講座についての参加者の皆さんの評価(参加者9名)
研修は分かりやすかった
 あてはまる    :8名
 ややあてはまる  :1名
 どちらともいえない :0名
 ややあてはまらない:0名
 あてはまらない  :0名

現場で役に立つと思う
 あてはまる    :9名
 ややあてはまる  :0名
 どちらともいえない:0名
 ややあてはまらない:0名
 あてはまらない  :0名

参加者の皆さんの詳しい感想は、心理教育支援室リソースポートのこちらのページから  

Posted by リソースポート at 08:55Comments(0)解決志向アプローチ
プロフィール
リソースポート
リソースポート
茨城県守谷市のカウンセリングルーム「リソースポート」です。主に子育てについてのカウンセリングを行っています。カウンセラーは学校心理士スーパーバイザー・臨床心理士の資格を持っていて、20年以上のキャリアがあります。
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